自筆証書遺言(手書きの遺言書)とは
自筆証書遺言(手書きの遺言書)とは
遺産相続について事前に決めておく方法といえば、遺言が効果的です。遺言は相続人の同意なしに法的拘束力を持つため被相続人の意思を最大限反映した相続が実現します。遺言にはいくつかの様式があるのですがもっとも一般的な方法が自筆証書遺言です。
自筆証書遺言は手書きで書かれた遺言書という意味ですから、あなたが自ら遺言書を書く場合は間違いなく自筆証書遺言になります。
自筆証書遺言は法的に有効な書類であることが求められますから、単なる遺書と違っていくつかの細かい条件を気にしなければいけません。また、遺言書を書く上では他にも注意したいことがあります。
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言を書く際にはこのような注意点があります。
どの遺産を残すが整理する
遺言を書くためにはしっかりと遺産分割について決めておくことが前提です。どの遺産を誰に分割するのかはもちろん、どんな財産があるのかも明らかにしておきましょう。遺言に書いていない財産が見つかると遺産分割協議が面倒になります。
相続財産は必ず財産目録にまとめてください。
相続するもの、対象者正確に漏れなく記載する
遺言を書くときは相続するものと対象者(相続人または受贈者)を明確に紐づけてください。例えば土地や建物を複数持っているときは「どの不動産か誰が見てもわかるように」書かなければいけません。
パソコンではなく手書きで
自筆証書遺言は手書きのみが認められています。面倒だからと一部をパソコンで入力したり音声、ビデオの形で残したら遺言書が全て無効になってしまいます。ただ、自筆証書遺言の中の文章の一部について、パソコン入力を認める動きもあるようです。
遺言書がしっかり読めるようボールペンなど消えないもので書くことが望ましいです。
いつ書いたかも必ず記載
「吉日」と書かれた遺言書は、無効です。遺言書を複数書いた場合は最も最新のものが有効となる点も注意してください。
署名、押印も遺言書の効力を認める条件となります。封筒の綴じた部分にも押印すると偽造防止になります。
保管もきちんとする
自筆証書遺言は自分でしっかり保管しましょう。被相続人が亡くなった後に処分されてしまうことも問題です。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を受けて初めて不動産登記等の相続手続きに利用できるようになります。
公正証書遺言との違い
以前、公証役場で遺言書を作成する公正証書遺言について紹介しましたが自筆証書遺言は公正証書遺言に比べてどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
自筆証書遺言のメリット
- 好きな時間に書くことができる
- 証人がいらない
自筆証書遺言のメリットは自由なタイミングで書くことができる点です。公正証書遺言は公証人と話しながら遺言を書かなければいけない上、証人も2人必要です。自筆証書遺言は煩雑な手続きがないので作成、書き換えが思い立った時にできます。
新たに遺言書を書き直すときも特別な手続きが必要ありません。
自筆証書遺言のデメリット
- 無効になる可能性が高い
- 遺言作成に慣れていないとかえって時間がかかる
- 思わぬトラブル発生の原因となることも
遺言はその書き方をはじめ細かい条件を満たして居ないと無効になってしまいます。極端な話、日付を書いて居ない遺言書や、修正液で直した遺言書、3文字程度の代筆を頼んだ遺言書は全て無効です。このような細かいところに注意を払いながら望ましい相続を考えていると、自由なタイミングで書けるメリットを得られるどころかかえって公正証書遺言より時間がかかってしまいます。
また、被相続人は法律のプロでないため遺産の分け方によっては思いもよらないトラブルに発展することもあります。仮に自筆証書遺言を書くという場合でも相続に慣れた司法書士のサポートを受けるのが賢明です。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットはこの2点です。
- 形式不備で無効になる可能性が極めて少ない
- 原本が公証役場に保管されるので、自筆証書遺言より安全
公正証書遺言は法律のプロ(法曹OBなど)である公証人が被相続人の意思を確認しながら作成する遺言書のことで、自分で書くより圧倒的にミスが少ないです。そのため原則として形式不備になりませんし、家庭裁判所の検認も必要ありません。裁判になっても強い証拠能力を持っています。
また、公証人は被相続人の要望を反映してくれるので書き方による内容の錯誤も防ぐことができます、(ただし公証人は相続のアドバイザーではありません)
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットは手数料を払うこと、いちいち公証人役場に出向かなければいけないこと、必要書類が多いこと、証人を2人集めなければいけないことですが有効な遺言を作成できることに比べれば些細なものです。
公正遺言書がおすすめ
自筆証書遺言はどんなに良い内容でも形式不備での無効が考えられますし家庭裁判所の検認を受けるまで不動産登記等の相続手続きがストップしてしまいます。しかも、司法書士は必要書類の手配や証人の引きうけができます。より安全で家庭裁判所の検認がいらない公正証書遺言を当事務所はお勧めします。