遺産分割協議書で遺言書と異なる相続は可能?

2018年09月12日(水)

前回、前々回で自筆証書遺言、公正証書遺言について解説しました。
実際に遺言が見つかって内容に不備や不満があった場合、相続人で遺産分割は行えるのでしょうか?
今回は遺産分割協議書について解説します。

遺産分割協議とは

遺産相続が発生した際に相続人が複数いる場合は誰がどの遺産を相続するのか、どれくらい相続するのかを話し合いで決めます。 これを遺産分割協議と言います。
この遺産分割協議の内容を明らかにして記録したものが遺産分割協議書です。

口約束だけだとどうしても後々「言った・言わない」のトラブルに発展する可能性が高くなります。
遺産分割協議書に遺産分割協議の内容が記録されていれば、それが証拠となりトラブルを防ぐことが可能です。

法的効力がある書類で、紛争が起きた際に裁判の証拠書類としても使われる他、預金の名義変更や不動産の相続登記といった手続きの際にも提出を求められることが多いので、作成する必要がある時が多いです。

遺言書に不備がある場合

遺言書は被相続人が、遺産分割協議書は相続人が作成する書類です。
相続においてはやはり被相続人の意志である遺言書の優先度が高くなっています。

民法で定められている法定相続人が相続する遺産の割合を「法定相続分」と言い、遺言書で独自に割合が指定されている場合は「指定相続分」と言います。指定相続分が遺言書で定められている場合は、そちらが優先されるのです。

しかし、その遺言書に不備があるケースも無いとは言い切れません。
また、遺言書を作成した時点から被相続人あるいは相続人を取り巻く状況が変わって、必ずしも遺言書のとおりに相続手続きが行えない場合もあることでしょう。

遺言書の内容に不備があったり、現状と異なっていたりする場合は遺言書そのものが無効になる可能性もあります。
まずは遺言書の有効性を判断し、その上で遺産分割協議書を作成することになります。

原則として被相続人が作成した遺言書が最優先、相続人らが作成する遺産分割協議書はその次ですが、万が一遺言に不備があった場合は遺言が無効になることもあり得るということを念頭に置いておきましょう。

受遺者が遺贈を放棄した場合

遺贈は被相続人の意志であり、受遺者の同意は必要ありません。
たとえば被相続人が長男の同意を得ずに遺言書に「自宅は長男に遺贈する」と書くことも可能なのです。ちなみに生前贈与の場合は贈与を受ける相手方(受贈者)の同意が必要となります。

遺言書は相続においては効力が強い書類であることは先ほども説明したとおりです。
しかし、受遺者の意志が無視されるということはありません。

相続財産の割合を指定して行う遺贈を包括遺贈と言いますが、包括遺贈の場合は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述することにより遺産の譲り受けを拒否することが可能です。

また、特定の財産を指定して行う遺贈を特定遺贈と言いますが、特定遺贈の場合はいつでも遺産の譲り受けを拒否することが可能です。

相続するのは現金や不動産といったプラスの財産ばかりではありません。借金や滞納した税金といったマイナスの財産も相続の対象です。
相続放棄を利用すればプラスの財産を受け取らない代わりにマイナスの財産も相続しないといったことが可能になります。また、相続放棄をすれば生命保険金を受け取った場合を除き、相続税を納める必要はありません。

遺言に反した分割の場合

原則として相続は遺言書に従って行う必要がありますが、相続人全員が遺言書の内容に不満がある場合は遺産分割協議を行なって、相続人らの意志で遺産分割を行うこともできます。

ただし、遺言書で遺言執行者が選任されている場合は注意が必要です。遺言執行者には遺言内容を実行する義務があります。
遺産の管理処分権を有していて、相続財産目録の作成や不動産の名義変更、預金の解約など、遺産相続にかかる手続きを行う権限があります。相続人は遺言執行者による遺言の執行妨げることはできません。これは民法にも定められています。

遺言執行者は未成年者と破産者を除き誰でもなることができます。
相続人から選出されるケースもあれば、弁護士や司法書士、信託銀行など専門家が選任されているケースもあります。

遺言執行者が専任されている場合は相続人全員に加えて遺言執行者の了承を得た上で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。

まとめ

遺産相続においては原則として被相続人の意志である遺言書が最大限優先されますが、遺言の内容に不備があったり、相続人全員が納得できなかったりした場合には遺産分割協議を行うことで遺言書と異なる相続を実行することも可能です。その際には遺産分割協議書を必ず作成する必要があります。

相続の際にはどうしても相続人同士の感情が衝突し、トラブルに発展しやすくなりますので、遺産分割協議書は条項や内容などに不備がないように作成することが重要です。

まずは専門家である司法書士に相談してみることをおすすめします。


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